「東南アジアのポピュラーカルチャー」という本の中で、東南アジア各国の「映画、ドラマ文化」についてまとめられていました。

東南アジアのポピュラーカルチャー 〜アイデンティティ・国家・グローバル化
- 作者: 福岡まどか,福岡正太,井上さゆり,ウィンダ・スチ・プラティウィ,金悠進,小池誠,坂川直也,鈴木勉,竹下愛,竹村嘉晃,津村文彦,馬場雄司,平田晶子,平松秀樹,丸橋基,盛田茂,山本博之
- 出版社/メーカー: スタイルノート
- 発売日: 2018/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一口に東南アジアとは言っても、宗教や民族構成、経済状況などが国によってガラリと変わってくるため、同一の文化圏とはとても呼べません。それだけに読み応えがありました。分厚い書籍ですが、写真や注釈なんかもたくさんあり、スラスラと読み進められます。
タイで「親不孝」はNG?
仏教社会のタイ。「徳を積む」なんていう言葉もありますが、「報恩」とくに「親孝行」という徳目が、同国では最高善の一つではないかと説明されています。
こうした考え方から、親孝行の規範に逆行するような意見は、雑誌、新聞でも殆ど見かけることはないとの事。映像媒体でも、親をないがしろにしたり、「俺は親の言う通りには生きない!」みたいな台詞が登場する(日本ではありふれている)ような描写は、今のところ顕著にみられることはないようです。
シンガポール
映画産業において自国の作品を育てるような「保護主義」が採用されず、支援政策も皆無だったことから、現在までに結構苦労したようです。
シンガポールと言えば「明るい北朝鮮」とも言われるように、政府による厳しい規制が存在しています。現在は、モラル護持政策を基に厳しい法規制が課されながらも、同国が生み出したコンテンツを「世界から評価されたい!」との願望も持っているだけに、映画界と政府の間の綱引きというか、バランスを取るのが結構難しいみたいです。
ベトナム
現代ベトナム映画を支えているのは、戦時中から続く元国営の映画スタジオで撮影された、ナショナリズム映画系の古い世代ではなく、新興の民間映画会社で主に娯楽映画を創っている新しい世代。
ドイモイ政策の導入以後、西側諸国の外国語映画が急激に流入した結果、過酷な市場競争に追い込まれたことが発端となったようです。そのまま廃れていかずに、若い世代がちゃんと育った点が書籍内でも評価されていました。
インドネシア
宗教が国家の根幹にかかわるインドネシアにおいて、異宗教婚、とくにムスリムとそれ以外の信者との結婚は微妙な問題を含み、映画として描くことは現在でも困難です。描かれているのは、愛する男女が結婚できないことを、最終的に納得するまでのプロセス。その壁をなんとか乗り越えようとする脚本はとても書けません……とのこと。