本件を改めて整理してみました。
どんな問題?
クーデター後に民間人を弾圧し続けているミャンマー国軍から、日本の防衛大学校が士官候補生を受け入れている、という話。
人権団体や在日ミャンマー人を中心に、「どうなのそれは……?」という声が上がっています。
そもそも防衛大学校とは
自衛隊の幹部を養成する施設です。一般の大学は文部科学省の管轄ですが、防衛大学校は防衛庁の機関なので、名称も「防衛大学」ではなく「大学校」となっています。
留学生の受け入れ
防衛大学校では、アジア各国の留学生を多数受け入れています。
本校では、これまでタイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ベトナム、韓国、ルーマニア、カンボジア、東ティモール、ラオス及びミャンマーの士官候補生等をそれぞれ留学生として受け入れ、日本の学生同様に教育訓練を行っています。
現在の本科留学生は116名(令和3年4月現在)であり、この他に研究科に在学するものもいます。
ミャンマー人留学生について
とあります。
日本政府の言い分
批判について、岸防衛相は下記のように答弁しています。
とは言え、この数年間の日本での教育がどのように生かされてきたのか......という点は今のところハッキリしません。
国軍司令官のミン・アウン・フラインは、国軍に抵抗する民主派勢力を「全滅させる」とまで言い切っています。
この情勢下で士官候補生及び幹部を訓練を継続させるということは、ミャンマー国軍の残虐行為へ直接的・間接的に関与する可能性があります。それはもう当初の目的から明らかに逸脱していますし、実際にそのような調査報告も出ている状況です。
所感
「ミャンマー国軍を内部から変えて欲しい!」という日本政府の思いも、個人的には理解ができます。ただ民主化が大きく後戻りしているこの状況下では、むしろ逆効果というか、少なくともそんな印象をミャンマー国民に抱いてもらうことは困難ですよね。このタイミングでしばらく受け入れを辞めてしまって良いと思いますし、むしろ現状は、受け入れる事のメリットが見出し辛いです。
国軍とのパイプを保ちながら日本独自の外交戦略を......といった思惑が根底にあるのかなと推測をしつつ、そのパイプをどう使っていくのかはよく見えてきません。この情勢下で機能するのか分からないパイプに頼り続けるのはもう諦めて、民主派勢力との関係強化に本腰を入れるべきではと思いました。日本には、民主化支援などを目的としたミャンマー人団体が50ほど存在しています。留学生として受け入れるべきは軍人ではなく、NUGをはじめとする民主派勢力や少数民族といった人々ではないのかな......みたいなことを考えたりしました。
口で言うのは簡単ですが、難しいんですかね……。
その他:出典
東洋経済ONLINE:ミャンマー軍留学生「受け入れ続行」の重大問題
https://toyokeizai.net/articles/-/586545?page=2
マナラボ:防衛大学校とは|学費や倍率は?各学科や入試制度も解説
https://docoic.com/59805
防衛大学校:留学生の受け入れ
HUMAN RIGHTS WATCH:日本政府、ミャンマー国軍から新たに士官候補生・幹部を受け入れ訓練
https://www.hrw.org/ja/news/2022/04/27/japan-train-new-cadets-officers-abusive-myanmar-military
MYANMAR JAPON ONLINE:【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!
https://myanmarjapon.com/top-interview/2206