ミャンマーのはなし

東南アジアのユニーク国家、ミャンマーに関する情報を発信していきます。

ミャンマーのはなし

ミャンマーの「選挙」の深層:なぜ軍政党が「勝つ」ように見えるのか

皆さん、こんにちは。ミャンマーの最新情報をお届けする日本語ブロガーです。今日は、ミャンマーにおける「選挙」という言葉が持つ、私たち日本人の感覚とは大きく異なる現実について、ある英語ニュース記事の内容をもとに深掘りしていきたいと思います。ミャンマー情勢に関心のある方なら、「選挙が行われる」というニュースに触れるたび、その実態はどうなのか、疑問に感じることも多いのではないでしょうか。

The Irrawaddyというミャンマーの主要な独立系メディアが、「なぜミャンマーの軍政党が選挙で勝つのか」という見出しで、この国における選挙の歴史とカラクリを分析しています。その記事が指摘するのは、過去35年もの間、ミャンマーの選挙は「有権者の真の勝利は拒否され、自由で公正な選挙は不可能であり、投票率すら無関係」という、ある意味悲しいパターンを繰り返してきたという現実です。これはつまり、ミャンマー「選挙」は、私たちが考えるような民意を反映するものではなく、軍が権力を維持するための道具として機能してきた、ということを示唆しています。

ミャンマーの政治背景:軍政支配と「偽りの民主化

なぜミャンマーでこのような状況が続くのでしょうか。その背景には、この国が歩んできた長い軍政支配の歴史があります。1962年のクーデター以来、ミャンマーは半世紀近くにわたって軍事政権下にありました。2011年からは、軍政から形式的な民政移管が始まり、「民主化」への歩みが始まったかに見えました。しかし、その「民主化」は常に軍の管理下に置かれたものでした。

その象徴が「2008年憲法」です。この憲法は、軍の政治への介入を合法的に保証する仕組みとなっています。例えば、議会の議席の25%は自動的に軍人議員に割り当てられ、国防省内務省、国境省といった主要なポストは、必ず軍人が就任するよう定められています。つまり、どんなに国民が民主的な政党に投票しても、軍が拒否権を持つ構造になっているのです。

この枠組みの中で、2010年には軍の後ろ盾を持つ「連邦連帯開発党(USDP)」が選挙で勝利しました。しかし、この選挙は不正が指摘され、民主化の象徴であるアウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」はボイコットしました。その後、2015年の選挙ではNLDが歴史的な圧勝を収め、アウンサンスーチー氏が国家顧問に就任し、真の民主化への期待が高まりました。しかし、これも長くは続きませんでした。

そして2020年。NLDは再び圧倒的な勝利を収めます。しかし、この結果を軍は認めず、大規模な選挙不正があったと主張しました。そして、2021年2月1日、軍はクーデターを実行し、NLD政権を転覆させ、アウンサンスーチー氏らを拘束しました。このクーデター以降、ミャンマーは再び軍の直接統治下に置かれ、国民は抵抗運動を続けています。軍は「新たな選挙を実施する」と繰り返し主張していますが、それはあくまで国際社会への体裁を保つため、そして自らの正当性を主張するためのものだと見られています。

今回のニュースが示す「選挙」のポイント

今回のThe Irrawaddyの記事は、まさにこの「軍が権力を維持するための選挙」の構造を浮き彫りにしています。主なポイントは以下の通りです。

  • 有権者の真の勝利が拒否される」: 過去の選挙、特に2020年のNLDの圧勝が軍によって覆されたことが象徴的です。国民が誰に投票し、どのような結果が出ても、軍が気に入らなければその結果は尊重されません。これはまさに、民主主義の根幹である「民意の尊重」が、ミャンマーでは機能しないことを意味します。
  • 「自由で公正な選挙は不可能」: 軍が支配する現状では、独立した選挙管理委員会は存在しません。反対勢力や民主化を求める人々は弾圧され、メディアも厳しく統制されています。このような状況下で、公正な情報提供や候補者間の公平な競争は望むべくもありません。抵抗運動が激しい地域では、そもそも投票の実施自体が困難であり、国民全体が自由に意思表示できる環境にはありません。
  • 投票率は無関係」: たとえ多くの市民が投票に参加したとしても、最終的な集計や発表は軍の管理下で行われます。軍が自らの都合の良い結果を導き出すために、投票率や得票数を操作することも可能となります。軍の支配地域では、軍人やその家族への組織的な投票圧力がかけられることも報じられています。
  • 軍政党が「勝つ」カラクリ: 軍の後ろ盾を持つ連邦連帯開発党(USDP)が「勝つ」のは、自由な競争の結果ではなく、軍による制度的・構造的な操作と弾圧の結果であると記事は指摘しています。軍は選挙制度そのものの変更(例えば、NLDに不利とされる比例代表制の導入など)も検討しているとされ、あらゆる手段で自らの優位性を確立しようとしています。

ミャンマー市民や周辺国・国際社会への影響

このような「選挙」の実態は、ミャンマー内外に深刻な影響を与えています。

  • ミャンマー市民: 民主主義への希望は打ち砕かれ、政治への参加意欲は失われつつあります。軍に対する不信感は募り、抵抗運動はより激化する一方です。人権侵害や貧困が蔓延し、多くの人々が苦しい生活を強いられています。
  • 周辺国: 難民の流入や国境地域の不安定化が深刻な課題となっています。特にタイやインドなどは、国境を越えてくるミャンマー市民への対応に追われています。アセアン(ASEAN)はミャンマー問題への関与を試みていますが、軍事政権が国際社会の声に耳を傾けないため、解決は難航しています。
  • 国際社会: ミャンマーの状況は、民主主義と人権という国際社会の普遍的価値への挑戦となっています。国連や各国は軍への制裁を課していますが、軍は中国やロシアなどの一部の国の支援を受けており、制裁の効果には限界が見られます。

ブロガーとしてのコメント

ミャンマー「選挙」の実態を知ると、私たちは「選挙」という言葉の重みと、それがミャンマーにおいてどれほど空虚なものとなっているかを痛感せざるを得ません。記事が指摘するように、35年間も同じパターンが繰り返されてきたというのは、途方もない絶望を国民に与え続けているということでしょう。

私たちが当たり前だと思っている「自由で公正な選挙」は、多くの人々が命をかけて獲得し、維持してきた尊い権利です。ミャンマーの状況は、民主主義がいかに脆く、守り続けることが難しいかを示しています。

軍事政権は「選挙を行う」と繰り返しますが、それが国民の意思を反映しない「形だけの選挙」である限り、ミャンマーの苦難は続くでしょう。国際社会からの注目と、ミャンマー市民が民主主義を諦めない限り、状況が変わる可能性はゼロではありません。私たちも、この遠い国の状況から目をそらさず、何ができるかを考え続けることが大切だと感じています。


Source: https://www.irrawaddy.com/opinion/analysis/why-military-parties-win-elections-in-myanmar.html