ミャンマーのはなし

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ミャンマー軍政の「選挙」強行:混乱続く中で進む支配強化の思惑

皆さんもご存知の通り、ミャンマーでは2021年のクーデター以来、不安定な状況が続いています。そんな中、現地独立系メディア「The Irrawaddy」が報じたところによると、ミャンマーの軍事政権が実施を計画している「選挙」の第3段階が強行され、現役大臣や軍関係者の子弟、軍とつながりの深い政党の幹部らが主要な候補者として名を連ねているとのことです。今回の選挙は、多くの議席が無投票当選となり、さらには激しい紛争が続く地域でも行われるという、極めて異例な様相を呈しています。

背景:なぜこの出来事が起きているのか

この動きを理解するには、ミャンマーの近年の歴史を少し振り返る必要があります。2021年2月、ミャンマーでは国軍がクーデターを起こし、民主的に選ばれたアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権を打倒しました。国軍は、前回の総選挙で不正があったと主張しましたが、その証拠は提示されず、国際社会からは広く非難されました。

クーデター以降、ミャンマーは混乱の渦中にあります。軍政は民主派の活動を厳しく弾圧し、多くの国民が投獄されたり、殺害されたりしました。これに対し、多くの市民が非暴力・武装の両方で抵抗運動を展開しており、ミャンマー全土で国軍と抵抗勢力(人民防衛隊=PDFなど)との間で激しい武力衝突が続いています。軍政は非常事態宣言を繰り返し延長し、そのたびに当初公約していた「選挙」の実施時期を延期してきました。

しかし、国際社会からの批判をかわし、自らの統治を「合法」であるかのように見せかけるため、軍政は「選挙」の実施を公言し続けています。今回の「第3段階の選挙」は、そのプロセスの一部と見られますが、その実態は、真の民主的な選挙とはかけ離れていると指摘されています。

今回のニュースのポイント

「The Irrawaddy」の記事が伝える今回の「選挙」の第3段階には、いくつかの重要なポイントがあります。

  • 段階的な「選挙」の実施: 今回は「第3段階」と報じられています。これは、軍政が最終的な総選挙に向けて、準備を着々と進めていることを示唆しているかもしれません。あるいは、連邦レベルや地域レベルでの空席を埋め、自らの支配構造を強化するための部分的な選挙である可能性もあります。いずれにせよ、軍政が「選挙」という形を通じて、自らの支配体制を確立しようとしている意図がうかがえます。
  • 候補者の顔ぶれ: 候補者には、現役の軍政大臣、軍高官の子弟、そして軍と密接な関係にある政党の党首らが名を連ねています。これは、軍政が既存の権力ネットワークを温存し、さらに強化しようとしている明確な証拠と言えるでしょう。国民の意思を反映するのではなく、軍とその協力者による支配を盤石にするための人選である可能性が高いです。
  • 無投票当選の多さ: 多くの議席で、競争相手がいない「無投票当選」となっている点が指摘されています。これは、民主的な選挙の基本である「選択の自由」が事実上存在しないことを意味します。野党勢力は弾圧され、民主派の主要政党であるNLDは非合法化されているため、軍政に都合の悪い候補者が立候補できる状況ではありません。結果として、この選挙は形だけのものとなり、軍政が望む人物が議席を得るための手段と化していると見られます。
  • 紛争地域での強行実施: ミャンマーでは現在も、各地で激しい戦闘が続いています。にもかかわらず、軍政はこのような紛争地域でも「選挙」を強行しています。これは、有権者の安全を無視するだけでなく、投票の公平性や透明性が確保されるはずもなく、選挙が正当なものとは言えない状況を作り出しています。住民は選挙どころではない、命の危険にさらされている状況です。
  • 「根強い権力ネットワーク」の露呈: 上記の点から、今回の「選挙」は、軍政が長年培ってきた「根強い権力ネットワーク」(entrenched power networks)を、改めて国民や国際社会に見せつけ、その正当性を主張しようとする試みであると言えるでしょう。

ミャンマー市民や周辺国・国際社会への影響

今回の軍政による「選挙」は、ミャンマーの内外に様々な影響をもたらすと考えられます。

  • ミャンマー市民への影響: 民主主義と平和を求める市民にとっては、この「選挙」は希望を打ち砕かれるものでしょう。軍政の支配がさらに強化されれば、抵抗運動はより困難になり、市民の自由や権利はますます制限される可能性があります。また、紛争地域での選挙強行は、さらなる混乱や軍政への不信感を招き、国民の分断を深めることにつながります。
  • 周辺国・国際社会への影響: 国際社会は、この「選挙」を真の民主的プロセスとして認めることはないでしょう。すでに孤立を深める軍政は、さらに国際社会からの批判と制裁に直面する可能性があります。特に、東南アジア諸国連合ASEAN)は、ミャンマー問題解決のための「5つの合意」(暴力の即時停止、対話、特使の派遣など)を掲げていますが、今回の軍政の動きはこれらの合意に真っ向から反するものであり、ASEANの対応が問われることになります。人道支援や平和構築への努力も、より一層困難になるでしょう。

ブロガーとしての簡単なコメント

今回の「選挙」の報道に接し、改めてミャンマーの民主主義への道がいかに遠く険しいものであるかを痛感します。軍政が「選挙」という名のもとに、自らの支配体制を盤石にしようとする意図は明白ですが、このような形骸化したプロセスが、本当に国民の支持を得られるとは到底思えません。

多くのミャンマー国民が命をかけて抵抗を続けている中、国際社会はただ傍観するだけでなく、より実効性のある形で、ミャンマー国民の民主主義への願いを支援し続ける必要があると感じています。私たち日本に住む者としても、遠い国の出来事とせず、ミャンマーで起きていることに引き続き関心を持ち、正しい情報を共有していくことが大切だと思います。いつか、ミャンマーの全市民が安心して、自由に、自らの国の未来を選べる日が来ることを心から願ってやみません。


Source: https://www.irrawaddy.com/news/politics/phase-3-of-juntas-election-brings-forward-ministers-military-heirs-and-party-chiefs.html