ミャンマーのはなし

東南アジアのユニーク国家、ミャンマーに関する情報を発信していきます。

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【備忘録】ミャンマーの「PDF」とは何なのか

 ちょっとまとめてみました。

 

 

「PDF」って何の略?

 正式名称はPeoples Defence Force(市民防衛隊)です。「NUG」が独自の国軍として創設した防衛軍になります。

 

ではNUGって?

 2021年の2月、国軍は選挙結果を認めずに軍事クーデターを起こして、国政を掌握。アウン・サン・スー・チー氏は拘束され、彼女が率いていた政党「NLD国民民主連盟)」の党員も多数拘束されました。

 同年2月5日、拘束を免れたNLDメンバーで結成されたのが「CRPH連邦議会代表委員会)」です。ただこの委員会は設立の背景からして、「NLD以外の政党に所属していた議員」や「拘束されてしまった議員」は参加できていませんでした。

 そこで同年4月16日、拘束が続くアウン・サン・スー・チー国家顧問、ウィン・ミン大統領などを含むメンバーで新たに結成されたのが「NUG(国民統一政府)」です。

 

NUGの特徴

 これまでのNLD、CRPHと異なり、少数民族の代表も参加していることが大きな特徴です。民族的な多様性が意識されたメンバー構成をとっており、連邦制民主主義を実現させることが1つの大きな目的になります。

 

ここまでのまとめ

  1. ミャンマーには、元々アウン・サン・スーチー氏率いる「NLD」という政党があった。
  2. 2020年の選挙でNLDは大勝した。
  3. 危機感を覚えた国軍がクーデターを起こす。スーチー氏含め、NLD党員を多数拘束する。
  4. 拘束を逃れたNLDメンバーは、「CRPH」を結成。
  5. 少数民族政党とも協力して、「NUG」が発足。
  6. NUGが防衛軍として「PDF」を設立。

 

その他:出典

MYANMAR JAPON ONLINE:【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!
https://myanmarjapon.com/top-interview/2206

ArayZ:ミャンマーの最新ビジネス法務
https://arayz.com/old/columns/myanmar_businesslaw_202107/

【備忘録】防衛大学校「ミャンマー軍留学生」について

本件を改めて整理してみました。

 

 

どんな問題?

 クーデター後に民間人を弾圧し続けているミャンマー国軍から、日本の防衛大学校が士官候補生を受け入れている、という話。

 人権団体や在日ミャンマー人を中心に、「どうなのそれは……?」という声が上がっています。

toyokeizai.net

 

 

そもそも防衛大学校とは

 自衛隊の幹部を養成する施設です。一般の大学は文部科学省の管轄ですが、防衛大学校防衛庁の機関なので、名称も「防衛大学」ではなく「大学校」となっています。

 

留学生の受け入れ

 防衛大学校では、アジア各国の留学生を多数受け入れています。

本校では、これまでタイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ベトナム、韓国、ルーマニアカンボジア東ティモールラオス及びミャンマーの士官候補生等をそれぞれ留学生として受け入れ、日本の学生同様に教育訓練を行っています。

現在の本科留学生は116名(令和3年4月現在)であり、この他に研究科に在学するものもいます。

 

ミャンマー人留学生について

 ミャンマー国軍からの留学生受け入れ自体は、従来から行われています。
2016年の記事になりますが、この際のやり取りとして
中谷氏は「民主主義国家における軍の役割について理解を深めてほしい」と強調した。スー・チー氏は「シビリアンコントロール文民統制)の下で民主化を促進させたい」と応じた。

とあります。

 

日本政府の言い分

 批判について、岸防衛相は下記のように答弁しています。

防衛大学校などで)文民統制について正しい知識を持った人材を育成することで、ミャンマー国軍にはその成果を生かしてもらう

とは言え、この数年間の日本での教育がどのように生かされてきたのか......という点は今のところハッキリしません。

 

 国軍司令官のミン・アウン・フラインは、国軍に抵抗する民主派勢力を「全滅させる」とまで言い切っています。

 この情勢下で士官候補生及び幹部を訓練を継続させるということは、ミャンマー国軍の残虐行為へ直接的・間接的に関与する可能性があります。それはもう当初の目的から明らかに逸脱していますし、実際にそのような調査報告も出ている状況です。

www.hrw.org

 

所感

 「ミャンマー国軍を内部から変えて欲しい!」という日本政府の思いも、個人的には理解ができます。ただ民主化が大きく後戻りしているこの状況下では、むしろ逆効果というか、少なくともそんな印象をミャンマー国民に抱いてもらうことは困難ですよね。このタイミングでしばらく受け入れを辞めてしまって良いと思いますし、むしろ現状は、受け入れる事のメリットが見出し辛いです。

 

 国軍とのパイプを保ちながら日本独自の外交戦略を......といった思惑が根底にあるのかなと推測をしつつ、そのパイプをどう使っていくのかはよく見えてきません。この情勢下で機能するのか分からないパイプに頼り続けるのはもう諦めて、民主派勢力との関係強化に本腰を入れるべきではと思いました。日本には、民主化支援などを目的としたミャンマー人団体が50ほど存在しています。留学生として受け入れるべきは軍人ではなく、NUGをはじめとする民主派勢力や少数民族といった人々ではないのかな......みたいなことを考えたりしました。

 

口で言うのは簡単ですが、難しいんですかね……。

 

その他:出典

東洋経済ONLINE:ミャンマー軍留学生「受け入れ続行」の重大問題

https://toyokeizai.net/articles/-/586545?page=2

 

マナラボ:防衛大学校とは|学費や倍率は?各学科や入試制度も解説
https://docoic.com/59805

防衛大学校:留学生の受け入れ

https://www.mod.go.jp/nda/exchange/accept.html#:~:text=%E6%9C%AC%E6%A0%A1%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%BF%E3%82%A4,%E8%A8%93%E7%B7%B4%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

HUMAN RIGHTS WATCH:日本政府、ミャンマー国軍から新たに士官候補生・幹部を受け入れ訓練
https://www.hrw.org/ja/news/2022/04/27/japan-train-new-cadets-officers-abusive-myanmar-military

 

MYANMAR JAPON ONLINE:【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!
https://myanmarjapon.com/top-interview/2206