旧首都のヤンゴンでは、現在も画像のような英国風建築が多数残っています。人々は紅茶を飲み、サッカーを楽しみます。富裕層の中には、英語を話し、イギリスの大学へと留学する人もいるようです。これはつまり、英国が未だにミャンマーへの強い影響力を維持している、ということなのでしょうか?
結論から述べますと、英国とミャンマーの関係は、ミャンマーの独立以後から、急速に希薄化しているようです。
その根源的な原因としては、もともとミャンマーには、インド帝国に対する燃料と食糧の供給地としての役割しか与えられていなかったので、インドの独立以後、こうした供給地としての必要度が低下してしまった、という点を挙げることが出来ます。
大戦後の英国の東南アジアへの関心は、天然ゴムや錫が確保できるマレーシアや、世界的な交易の中心地となっていたシンガポールへと向かっていきます。
先に述べた英国風建築物、そして紅茶やサッカーというイギリス由来の文化は未だミャンマーに根強く残っているわけですが、政治的な繋がり、軍事的な繋がりはほとんど皆無といって良い状態です。イギリスとその植民地であった独立国家から構成される国家連合「イギリス連邦」にも、ミャンマーは参加していません。
しかしながら、「ブレグジット」を控える英国政界。
「国民投票の結果は、イギリスが内向きになることではなく、世界で野心的かつ楽観的な新しい役割を担うことへの決意表明であった」という考え方から「グローバルブリテン構想」がぶち上げられています。
ブレグジット後の英国は「海の覇者」として復活する | ニューズウィーク日本版
近年発展の著しい、シンガポールやインドネシアをはじめとした東南アジア諸国に、英国が保有する多くの艦隊を派遣し、アジア太平洋地域における軍事的プレゼンスを高めるという構想です。
こうした英国の取り組みに、旧植民地でもあったミャンマーが参加するという展開もあり得ると思います。また、現在はロヒンギャ問題等で欧米諸国から強い批判を受けている状況下にもありますから、孤立する英国を受け入れ、新たな関係を築き上げていく意義は大きいのではないでしょうか。